2017年8月23日水曜日

クレイジー・サマー ~夏に聴きたいキリンジの10曲~


キリンジの大名曲「エイリアンズ」がここ最近話題になっています。

なんでも能年玲奈こと、のんが出演するCMのバックで流れているそうで。


17年前の曲ですが今なお色褪せず話題になるということは、まさに名曲の証ですね。





このCMで初めてキリンジを知ったという人も少なくないようです。

そんなキリンジ初心者の方に、夏だからこそ聴いてほしいキリンジの10曲を紹介いたします。



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①汗染みは淡いブルース


積乱雲の白と空の青のコントラストが鮮やかな初夏。

キリンジのファーストアルバム収録の兄・高樹による本作は、 夏の始まりを告げるような曲です。


爽快なホーンとハンドクラッピング、パーカッションっぽいユニークなコーラス、さらに兄と弟のコーラスの掛け合いといった初期キリンジの魅力が全開。

歌詞も、遊び心ありつつ知的かつエロティックで、高樹らしさが炸裂していると言えるでしょう。


滴る汗も爽やかな夏の幕開けです。


②ブラインドタッチの織姫


煌めくようなストリングスが、夏の夜空に広がる天の川を思わせます。

華々しいメロディーとサウンド、甘美な歌詞、花開くようなコーラスワーク、どこをとっても多幸感に溢れる一曲です。


高樹による曲で、歌詞も彼らしい視点で恋愛の美しさが描かれています。

“お茶を囲むかしまし娘のカルテット 品定めする瞳が潤んでいるよ”

・・・という女の子の描き方が何とも麗しい。


『スウィートソウルep』収録の、表題曲にも劣らない名曲。



③夏の光




疾走感に溢れ、滝のように降り注ぐダイナミックサウンド。


「TREKKING SONG」とそのサウンドが似ています。
いつぞやのライブでこの2曲が立て続けに演奏されたときは、そのサウンドに飲み込まれそうになりました。
 

すがすがしい夏の朝に聴きたい一曲です。

8thアルバム『BUOYANCY』収録。



④十四時過ぎのカゲロウ


弟・泰行が作曲、兄・高樹が作詞の作品。
10年以上活動を共にした兄弟ですが、二人でつくった作品は意外と少なく、極めて珍しいです。 

水泳選手をストイックに描いた歌詞は、高樹ならではの主人公に対する生々しい程の繊細な視点が見られます。
アコーステックなラテン調のサウンドといい、ストイックな歌詞といい、色んな意味でアツい曲。

灼熱の真夏を思わせます。


14thシングル曲で、アルバム未収録の曲。



⑤夏なんです


スピッツやマイラバといった様々なアーティストが、はっぴいえんどの楽曲をカバーしたアルバム『Happy End Parade-Tribute Toはっぴいえんどトリビュート』収録。

キリンジによる「夏なんです」は 、フェンダーローズを基調としたアレンジによって原曲の持つ静謐さと荘厳さを維持しつつも、
水の音や踏切の音といったサウンドエフェクトが施されており、彼ららしい知的さと遊び心を感させます。



⑥真夏のサーガ


弟・泰行が脱退し、6人組のバンドとして生まれ変わったKIRINJIによるシングル曲。

ミドルテンポの曲調で、ボーカルは高樹です。 

高樹ののびやかなボーカルや、シンフォニックなサウンドとペダルスティールをフューチャーしたアレンジ、そして清々しく前向きな歌詞は、
新生KIRINJIの出発点的楽曲の「進水式」に通じるところがあり、生命力や力強さを感じさせます。


うだる暑さも吹っ飛びます。



⑦Ladybrid


ひと夏の恋愛を気だるく、エロティックにうたいあげた一曲。

泰行による曲で、7thアルバムに収録されています。


ボーカルは良い意味でねっとりしていて泰行至上最もセクシーだと言えるでしょう。

インディーズ時代から兄による際どい歌詞を歌ってきた泰行ですが、兄の歌詞に対しては照れがあるのか無表情にサラッと歌っている印象です(それはそれで良さがある)。

本作の歌詞といえば、兄によるエロティックな歌詞におとらず結構激し目ですが、
泰行本人によって書かれた歌詞な為か、とても艶やかに、さらに吐息なんかも入れながら歌ってしまっているんです。


ただでさえ美声なのに、もはや悩殺モノと言えるレベルです。



⑧カメレオンガール




カメレオンガール=魔性の女、気分屋の女といったところでしょうか。

そうした女性に振り回される男の哀れみを切なくも痛快に描いた曲です。


アコーステックなシングル・バージョンと、80’っぽい打ち込みサウンドの『For Beautiful Human Life』収録バージョンがあります。


“カフェテラスの 悲しいオブジェさ”
“心の奥に 菓子パンをねじ込み”
“色褪せた男の背中に 君は夏の模様の爪痕を残した”


ベクトルは違えど、「エイリアンズ」に劣らない名歌詞だと思うんです。

キリンジの歌詞といえば兄・高樹の方が取り沙汰されがちですが、弟・泰行も兄に劣らず洒脱で文学的でユニークで・・・
挙げだしたらきりがないほどの魅力で溢れています。



⑨クレイジー・サマー


「Ladybird」「カメレオンガール」「クレイジー・サマー」は全て泰行による曲で、“大人の恋愛”という共通したテーマが描かれています。

いわば、“大人の夏の恋愛3部作”。
「クレイジー・サマー」はその最終章です。

君と過ごした夏が忘れられない主人公の歌ですね。

“乱暴に愛した 夏の終わり”
“さよならを前に きっとどうかしていた 大人の面で”
“馬鹿騒ぎの彼方で 今も僕は溺れたままさ”

いやー、1節1節がクレイジーですね。
そしてそれを堪らなくセクシーに、そして切なく歌いあげるんです。

兄・高樹派だという人も、“大人の夏の恋愛3部作”を立て続けに聴けば、
きっと泰行派になるはずです。
 

『スウィートソウルep』収録曲。



⑩最後の週末


キリンジを脱退後にリリースされた堀込泰行のアルバム『one』収録曲。
晴れ晴れとしたメロディーとサウンドの曲で、アルバムの中で最もキリンジ時代を思わせます。

歌詞は「大人の夏の恋愛3部作、その後」といった感じでしょうか。


秋が来る前に駆け込みで聴いてほしい一曲です。




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以上、夏だからこそ聴いてほしいキリンジの10曲でした。


冒頭に触れた「エイリアンズ」ですが、2017年夏、作者である堀込泰行はラバーズバージョンとして新録。
配信と12インチシングルでリリースしました。

オリジナルのアレンジとは一味違うこちらのバージョンは夏らしさがあり、夏の夜なんかにぴったりです。



キリンジ心のベスト10~初期編~:http://srysig.blogspot.jp/2016/09/10.html


キリンジ心のベスト10~兄弟時代後期編~:http://srysig.blogspot.jp/2017/03/10.html