2017年3月18日土曜日

ドゥービー・ブラザーズの要、パトリック・シモンズ

ドゥービー・ブラザーズで好きなメンバーは俄然パトリック・シモンズ。

パトリック・シモンズ(Patrick Simmons) ことパットはドゥービーズのデビュー以来、唯一のオリジナル・メンバーである。

彼こそがドゥービーズの要なのだ!!

Taken' it to the streetsのこのドアップはパット・シモンズ


しかし、ドゥービー・ブラザーズと言えば、トム・ジョンストンもしくはマイケル・マクドナルドが好きだという人が多いだろう。

70年代前半ドゥービーズの豪快なロックが好きな人はトム・ジョンストンを、
70年代後半ドゥービーズのAORなサウンドが好きな人はマイケル・マクドナルドを選ぶように、
時期によって2人の音楽性が顕著に反映されているからだ。


このように、ドゥービーズといえばトミーとマイクが目立ちがちである。
またこの2人はボーカルも特徴的だ。

トミーは荒々しいロックサウンドに合う、ブルージーでワイルドなボーカル。

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一方、マイクはスモーキーで深みのあるソウルフルなボーカル。

2人ともインパクトのある濃ゆい顔をしているが、その歌声も濃厚で印象的である。


パットはといえば、クールでさわやかな声の持ち主だ。2人ほどの個性はないが、クセが強くないと言う意味では耳馴染みが良く、聴き易いボーカルだと言える。

顔も端正で容姿もスマートなナイス・ガイだ。

イケメンで声も良いパットだが、強烈な2人の影になりがちなのである。


…って結局顔じゃん!、と言われそうなので、具体的にパットの楽曲を聴いてみよう。

以下、特に好きなパットの10曲です。(リリース順)



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①South City Midnight Lady(『Captain and Me』収録)


フォークやカントリー・ミュージックからひときわ影響を受けたパットならではの曲。
歌詞はパットの故郷であるカリフォルニア州南部のサン・ノゼ(=サウス・シティー)の女性たちを讃えたもの。

カントリー・テイストを際立たせるペダル・スティール・ギターを演奏するのは、
当時スティーリー・ダンに在籍していたジェフ・“スカンク”バクスター。

ミドル・テンポの爽やかな曲調で、
カントリーを基調としているが、いなたさはなく、メロウで都会的。
タイトルの表す通り、まさにシティーでミッドナイトでレディーな曲。


トミーのブルースに根ざした荒々しいロックサウンドと好対照を成す。


②Black Wlter(『ドゥービー天国』収録)


パットと言えばこの曲を挙げる人が多いのではないだろうか。
言わずと知れたドゥービーズ初のヒットナンバー。

歌詞はミシシッピへの憧憬にあふれ、旅情掻き立てられるものだ。

この歌詞の通り、ホンキー・トンク調な曲だけあって、
フィドルが効果的に演奏される。


途中でゴスペル調のコーラスの掛け合いが始まり、雰囲気がガラっと変わる展開もユーモラス。

このコーラスを発案したのはプロデューサーのテッド・テンプルマンだそう。
かつて彼自身が在籍していたハーパース・ビザールで複雑なコーラス・アレンジを担当していたこともあり、ドゥービーズのコーラス・ワークも特色あるものとなっている。

同時期に活躍したウエスト・コーストのバンドでコーラス・ワークが抜きん出ていると言われる所以は、彼の関与が大きいのではないだろうか。


こちらのライブバージョンのジェフ・バクスターによるペダル・スティールも鳥肌モノ。
曲の幽玄さを際立出せる。



③Neal's Fandango(『スタンピート』収録)


スピード感溢れるロック。

ダブル・ドラムとトリプル・ギターが力強く疾走する。
まさに“スタンピート”の如き勢い。

リトル・フィートのメンバーであるビル・ペインの鍵盤が入り、ソロ回しにも拍車が掛かる。


ここでも素晴らしいコーラスが聴ける。
1分45秒辺りからダイナミックなスケープが広がっていくように、サウンドが開ける。
これぞバーバンク・サウンド。


こうしたサウンドもプロデューサーのテッド・テンプルマンの付与するところが大きいのではないだろうか。



メンバーとエンジニアのドン・ランディと共に裏ジャケに映るテッド(下段右から2番目)

因みにニールとはビート詩人のニール・キャサディのことで、同アルバム収録の「I Cheat The Hangman」にも見られる、ストーリー性ある歌詞となっている。
こうした捻りの効いたパットの歌詞は、音楽一筋な歌詞が多いトミーや恋愛ソング中心のマイクとは一線を画する。



こちらのライブの演奏もとてつもなくエキサイティング。
間奏のギター・ソロで暴れまくるジェフ・バクスターが最高。


④Slat Key Soquel Rag(『スタンピート』収録)


パットと言えばアコギのフィンガーピッキング。
ここではお得意のラグ・タイム奏法を。
歌なしだが、ギター・インストとして充分楽しめる曲。

パットはAOR路線に突入後も、「Larry The Logger Two-Step」や「Steamer Lane Breakdown」といったカントリー調インストナンバーを1アルバムにつき1曲取り入れ続けた。



⑤8th Avenue Shuffle(『ドゥービー・ストリート』収録)


舞台はニューヨーク。
かつて歌われた南部への憧憬に対し、本作では都会の喧騒が陽気に歌われる。

トミーの体調不良によるバンドの脱退により、
スティーリー・ダンからジェフ・バクスターとマイケル・マクドナルドの2人が加入するに伴い、
パットの楽曲も音楽的に一層幅広いものになっていった。

本作はメンフィス・ホーンのソウル・フルな演奏や変速リズムが取り入れられ、
サウンドにおける目覚ましい変化が楽しめる。

また、パットとスカンクの異なる個性を持ったギター・プレイの対比も面白い。
ラテン風のギターリフを基調とし、ブリッジ部分にはブルース風の豪快なリードギターが聴ける。


カリフォルニアの片田舎から、大都会ニューヨークへと、
ドゥービーズは都会的なサウンドに移る。


⑥Rio(『ドゥービー・ストリート』収録)


「8th Avenue Shuffle」と同じくラテン調の曲ではあるが、洗練度が大幅に増す。

サンバ風のパーカッションとジャジーなエレピによるイントロにベースが入ってくれば、グルーヴが一気に炸裂。
リオのカーニバルよろしく、解放感に満ち溢れる。

万華鏡のようなコーラス・ワークは楽曲に煌めきを与える。

「ねえ、乗ってかない?」
というワンフレーズだけ登場するマリア・マルダーが何とも粋な演出だ。


⑦Echoes Of Love(『運命の掟』収録)


パットの曲にもマイケル・マクドナルドの個性が色濃く反映されるようになる。

パット作のこの曲も、本来ならギター中心のアレンジといったところだろうが、
イントロも曲全体のアレンジもマイクのシンセが中心である。
キャッチーなシンセのリフがいかにもマイクらしい。

パットによるメロウなメロディーと爽やかなボーカルはマイクのサウンドとも相性抜群だ。

シングルとしても発売された。


⑧Livin' On The Fault Line(『運命の掟』収録)


より複雑化するリズム。
より深遠化するグルーヴ。 

同アルバム収録の 「China Groove」に通じるインプロビゼーション・ナンバー。
ファンキーでジャズ色の強いプログレッシブな楽曲であり、パット、そしてドゥービーズの新境地と言える。

後半にかけて曲が盛り上がっていく様は、静かな気迫を感じさせる。
ビブラフォンが効果的。

こうした曲もトミーやマイクには無いもので、
カントリーやメロウ路線とは別のパットの持ち味が発揮されている

アルバムの表題曲。


⑨Sweet Feelin'(『ミニット・バイ・ミニット』収録)


アコーステック・ギターの音色が優しく響く、最高にメロウな一曲。
ワーナーのレーベルメイトであるニコレット・ラーソンとパットのデュエットが美しい。

呼応するようなコーラス・ワークも甘美。

プロデューサーのテッド・テンプルマンも共作し、パーカッションとしても曲に参加。
彼の叩き出すサウンドは曲のソフトな印象を際立たせる。

まさにSweet Feelin'な曲。



⑩If You Want A Little Love(『メロウ・アーケード』収録)


最後はパットの唯一のソロアルバムから。

1982年にドゥービーズを一旦解散させたパットは翌年ソロ作をリリースする。

トミーからマイクまでお馴染みのメンツも参加。

楽曲はカントリー調のものやポップ・ソウル風ナンバー等、ドゥービーズ・サウンドを彷彿とさせるものに交って、
ハード・ロックやディスコ風といったアレンジやヒューイ・ルイスのカバー等、ドゥービーズ時代のパットらしからぬ楽曲も見られる。

本作「If You Want A Little Love」はディスコAORな楽曲。
咲き乱れるような早口コーラスが何ともユニーク。
タワー・オブ・パワーによるホーンが彩りを添える。

パットの新たな一面が垣間見える楽曲となっている。



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以上パットの魅力を掘り下げてみました。

メンバーチェンジによってバンドの音楽性が大きく変化するに伴い、自身の音楽性に柔軟に磨きをかけていったパット・シモンズ。

つまり、強引に言い方をしますと、パットの歴史=ドゥービーズの歴史でしょうか。

パトリック・シモンズこそドゥービーズの要だ。
と、冒頭で豪語しましたが、それが過言ではないということが伝われば…、と思います。


2016年10月18日火曜日

Eight Days A Week~BEATLES どのメンバーが好き?~

ビートルズのライブドキュメンタリー映画「Eight Days A Week」を観た。

ライブ映像のビートルズはかっこいい。
溢れんばかりの情熱とエネルギー、はち切れんばかりの若さ。
荒削りで遮二無二なパフォーマンス。
バンドの良さを遺憾なく発揮した、これぞロックバンドというようなライブ。
何よりも楽しそうに演奏している姿が良い。

もし自分が生でビートルズのライブを観ることができたなら、そのあまりのかっこよさに、きっと黄色い声をあげるだろう。
卒倒してしまうかも知れない。
多くのファンがそうであったように。

「ジョンのシャウトが一番かっこいいよ」
「誰よりもノリが良いパフォーマンスのポールが一番だ」
「ジョージの下まつげ、あれは最高にセクシーだ」
「激しく頭を振りながら演奏するリンゴが最高」
こんなふうにどのメンバーが好きかで盛り上がるだろう。

かく言う自分は俄然ポール派。
何故かって、ポールの曲が好きだから。


と言いつつも、ライブ映像を観ているとメンバー全員が魅力的に思えてくる。

今回の映画を観て改めていいな、と感じた彼らのパフォーマンスを3曲分取り上げてみた。



①「Help」



他愛ない恋をうたった曲が大半だった初期ビートルズ。ライブ演目も自ずとそういう曲で占められる。
しかし「Help」辺りから、ジョンの曲は自身の内面を曝け出した歌詞が多くなる。

曲調はあくまで明るいロックンロールだが、歌詞は自分を見失ってしまったジョンの悲痛な叫びだ。
「ジョンが初めて本当の自分のことをうたった曲だよ」とポールはインタビューで回想する。

ステージのジョンは思いっきり”Help”と叫ぶ。
ジョンの心の叫びがストレートに届く。

躊躇なく自分をさらけ出すジョンの姿はかっこいい。



②「All My Loving」



これぞ他愛ない恋をうたった曲。
ポールがつくった曲だけに曲調も明るく、軽快かつ陽気なポップスだ。
もちろんボーカルもポール。

なにがかっこいいかって、ベースを弾きながら歌うポールが良い。
この曲の動き回るようなベースライン、所謂ランニング・ベースをプレイしつつボーカルをとることは容易ではない。
しかし、ポールは涼しい顔でひょいひょいと演奏しているのだ。
音源だけでは気づきにくいが、演奏する手の動きを見ると改めてすごいと思わされる。

ジョンの3連で刻むギター、その間を縫うリンゴのシャッフルドラム、そしてこのランニング・ベースがともに交り合って生まれる軽快なグル―ヴも最高。

2番でジョージがポールと同じマイクでハモるところも最高。(オリジナル音源ではポールが多重コーラスをしているらしい)

心踊るパフォーマンス。心浮き立つメロディーとハーモニー。
楽しそうに演奏するフレッシュな4人を観て、心ときめかずにはいられない。



③ 「Baby is Black」



ライブといったら激しい曲の演奏シーンを浮かべがちだが、わりと落ち着いたワルツ調のこの曲がかっこいい。

「Can't Buy Me Love」や「I Wanna Be Your Man」、「It Won't Be Long」といったパワフルなロックンロールももちろんかっこいい。
だが、そういった盛り上がる曲の間にこの曲を挟むところが良い。

この曲が収録されたアルバム「BEATLES FOR SALE」の中でも「Baby is Black」はあまり目立たない曲かもしれない。
強いて言うならジョンとポールのダブルボーカルのハーモニーが美しい曲といった印象だ。
 
ライブ映像を観て良いと思った点は二人が同じマイクでうたうところだ。
ビートルズのライブで頻繁に登場するこの”二人でひとつもマイクでハモるシーン”も「Baby is Black」では特に良いと感じた。

落ち着いた曲なので、そのハーモニーをじっくりと味わうことができるからだ。

この曲はジョンとポールが同じ部屋で一緒につくったという。
こうした逸話を聞くと一層よさが増す。

ロックンロールから伝わる衝動的な情熱とは別の、静かな情熱がしたたかに伝わってくる曲だ。


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以上、今回ライブ映画を観て特に良いと思った3曲でした。

結局のところ、ジョンとポールが主に曲をつくっているゆえ、二人ばかりにフォーカスしてしまいましたが・・・


顔のタイプでいうと誰派かだって?
スチュワート・サトクリフですかね。
デビュー前のビートルズのベーシストで夭折した芸術家の。

何故かというと、昔好きだった人に似ているから。
・・・なんてね。


2016年9月22日木曜日

キリンジ心のベスト10~初期編~

ついに出ました。キリンジ初期5作アナログ。

5作とも無人島に持っていきたいレベルの作品なので、この日を待ちわびていました。

2014年にも冨田恵一によるリマスターで紙ジャケCDとしてリリースされたましたが、今回のアナログもこのときの音源を使用しているということです。

すべて2枚組のLPゆえ値段もそれなりにしますし、
もうリマスターCDは持っているしで今回のアナログはいいや、
とかいう邪念も少なからずありましたが、買ってしまいました。


半年前に出た「For Beautiful Human Life」も

「3」のインパクトが半端ない




ということで、この5作の中から心のベスト10を選んでみました。(収録アルバム順)


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①汗染みは淡いブルース


まずは1stから。
さわやかなエロティシズムを感じる兄の曲。

ラテン・ビートの出だしはスティーリー・ダン「Do It Again」を思わせますが、
爽快なホーンとハンドクラッピング、パーカッションっぽいユニークなコーラスが合わさることによってキリンジワールドに染まっていきます。

積乱雲と空のコントラストが眩しい夏の日に聴くと最高。

”背中に地図を描く”って一節に、汗であるにも関わらず美しい光景が目に浮かびます。
ここのメロディーがまた切ない・・・!


太宰治の短編「満願」の読後感に似たものを感じる曲です。

同じ”さわやかなエロティシズム”を感じる兄曲といえば「野良の虹」も良いです。

ちなみにYUKIも好きな曲だそう。(兄弟ラストツアーパンフに寄せられたYUKIのコメント参照)


②ニュータウン

 

こちらも1stの兄曲。

いつもの街の景色さえも新鮮に見えてしまうような強烈な恋を描いた曲。
おそらく、ここでの”ニュータウン”のニューとはそうした心理的なことなのではないでしょうか。

視覚的かつドラマティックにその様子が描かれた歌詞。
高揚感で溢れるサウンド。

恋の喜びによって胸が高まる様がありありと伝わってきます。



③唐変木のためのガイダンス

 

2ndから弟の曲。
バンジョーとフィドルが効果的なカントリー&ウエスタンソング。

「くよくよするなよ」「鋼鉄の馬」等、弟曲にはカントリーソングがわりと多いようです。

この手の弟曲は歌詞も楽観的でのんびりとしています。
心地よいヴォーカルと相まって、聴いていると和やかな気分になれます。


”大あくびにジャストミート” って歌詞、好きだなぁ。

2ヴァース目の何拍か間を置いて歌に入るところが地味にニクいです。



④さよならデイジーチェイン


弟によるシングルのカップリング曲。今回1stにボーナストラックとして収録されています。
この曲もアップテンポで、カントリー要素が強い作品です。

”今日もひとつホクロ見つけた 星座みたいに結んだら、君は笑うかな”
… このささやかな茶目っ気、好きです。


別れの曲 (シリアスな離別ではなく、帰り道での別れの歌だと思われます) ですが、明るい曲調が悲しみを感じさせず、爽やかです。
そのギャップが逆に切なくさせます。

似たような曲調の兄による「茜色したあの空は」も粋に別れが歌われていますね。


弟がキリンジとしての最後のコンサートでこの2曲を歌ったときは、思わず泣きそうになりました。



⑤癇癪と色気



兄によるシングルのカップリング曲。今回はボーナストラックとして2ndに収録されています。

タイトル通り、歌詞がなかなか際どいです。

「乳房の勾配」なんかもそうですが、兄の歌詞には際どいフレーズがたまに出てくるので、初めて聴いたときは戸惑います。
この曲のサビの歌詞にも動揺しましたね。際どい言葉がマシンガンのように出てきます。

アレンジやメロディーが洒脱で歌詞も文学的なので単にエロチックなだけではなく、品や知性が感じられます。
弟が無感情に近いくらいサラッとした歌い方をしているのも粋です。

”蠢く僕の指は花をあしらった賄賂贈る君に”
という一節は決して直接的な表現はないのですが、とてつもない官能美をもつ一節だと思います。


元は「好きさと放ってすぐに」という曲から歌詞の一部とアレンジを変えてつくられているみたいです。
こちらは初音源であるインディーズ盤にシークレットトラックとして収録されているがゆえ、デモ音源っぽさもあります。
この曲をあえてシークレットトラックとして選ぶセンスに痺れますね。



⑥風を撃て


弟による1st収録曲。
初音源であるインディーズ盤のオープニング曲でもあるのですが、初っ端からそのクオリティの高さに驚かされます。

旋風が立つようなコーラスから始まるイントロ。
颯爽とした突き抜けるようなサウンド。

歌詞は抽象的で難解ですが、イマジネーションが刺激されます。

まるで目の前に壮大なパノラマが広がるよう。



⑦ムラサキ☆サンセット



兄によるシングル曲。4thアルバム「Fine」のオープニング曲でもあります。

間奏の兄と弟によるギターソロの掛け合いが爽快かつ豪快です。


キリンジと引き合いに出される洋楽ミュージシャンといえばスティーリー・ダンが有名ですが、 ダンと共に活躍したドゥービー・ブラザーズやイーグルスのエッセンスも多くの曲で感じられます。

ムラサキ☆サンセットはダンから引っこ抜かれたジェフ・バクスターが加入した後からマイケル・マクドナルド的AOR色が強くなる前までのドゥービー・サウンドを彷彿させます。
豪快なロックとカントリー要素を含みつつ、いなたさとと洗練さとが拮抗している時期です。


イーグルスの影響といえば弟曲の「Lullaby」が有名ですね。「アルカディア」なんかも,っぽいです。

70年代の所謂ウエストコーストサウンドの影響が色濃く出ているように思います。
弟がイーグルス、兄がドゥービーズ、冨田ラボがダンのイメージでしょうか。あえて当てはめるなら。

キリンジの5作品がかつてウエストコーストロックを多く輩出したワーナーからリリースされたことにも少なからず関連していように思えてきます。



⑧冬のオルカ


インディーズ盤の2ndシングルである弟曲。1stアルバムにも収録されています。

スピード感あふれる爽快なロック。
兄とのコーラスの掛け合いも勢いがあり、心地よいドライブ感が増します。

オルカとはシャチのことですが、歌詞に出てくる”セダン”に見立てているのではないかと勝手に思ってます。
色合いといい、ソリッドなフォルムといい、似ているからです。

オルカの勢いよく泳ぐ姿とセダンの颯爽と駆け抜けていく様がシンクロします。


この曲もウエストコーストロックっぽいです。
”スタンピート”っていうドゥービー・ブラザーズの曲もありますしね。



⑨牡牛座ラプソディ



曲は共作、作詞は兄による、2nd収録のシングル曲。

弟曲の「双子座グラフィティ」と対になってるのが素敵です。

ちなみに兄は6月生まれの双子座、弟は5月生まれの牡牛座だそう。
ですが、お互いの星座を意識してつくったのではないようです。

「双子座グラフィティ」はエヴァーグリーンなラブソングであるのに対し、「牡牛座ラプソディ」は変化球的なユーモアある曲。


意味のないような歌詞ですが、遊び心ありつつ知的で鯔背な味わいを感じさせます。
楽曲自体も一癖あって、やみつきになる良さのある曲です。 シングルにするにはなかなか挑戦的な試みだったのではないでしょうか。



⑩代官山エレジー



最後は「omnibus」から。兄が藤井隆に提供した曲です。

”じゃんけんしたの覚えてる?勝ったら未来あげるって”…この一節の斬新さ、インパクトたるや。
ここをサビでなく2番冒頭にもってくるところにも脱帽。

"代官山""じゃんけん"という相容れない言葉ををひとつの歌詞にするセンス。
洒落た大人の街である代官山が舞台であるのに、じゃんけんで未来を決めてしまうような無邪気な恋愛を描いたギャップ。

洒落ていてどこか無邪気な、まさに"くすぐったい恋"ですね。


・・・って書き終わって気づいたんですが、この曲は松本隆 作詞でした。
少し強気な女性の描き方が、松本隆っぽいです。

メロディーもアレンジも代官山のイメージぴったりで、極めて都会的。


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以上初期キリンジ心のベスト10でした。


本当に全てが名曲なので10曲に絞るのにかなり悩みました。

今回のアナログには未収録ですが、
「水とテクノクラート」や「休日ダイヤ」なんかもこの頃のキリンジで好きな曲です。



キリンジ心のベスト10~兄弟時代後期編~:http://srysig.blogspot.jp/2017/03/10.html

クレイジー・サマー~夏に聴きたいキリンジの10曲~:http://srysig.blogspot.jp/2017/08/10.html 


2016年9月19日月曜日

SAKEROCK~細野晴臣40年ぶりの中華街ライブ 星野源20年来の夢~


2016年5月7日(土)、横浜中華街・同發新館にて行われた細野晴臣のライブ
「a NIGHT in CHINATOWN」を観に行った。


同發でのライブは、細野晴臣にとって“ちょうどトロピカルで異国的な音楽世界に入り込んでいた”時期に行われた1976年の中華街ライブ以来となる。

細野史にとって重要なこのライブから、今年で40年。
同じ日、同じ場所で今回のライブが開催された。



横浜 光る街

日が沈み、ネオンが輝き出す中華街。
人で溢れ、ひときわ賑やかな場所に、老舗中華レストラン「同發」は聳える。

会場は「同發新館」ということだが、ここも年期が入っている。細野さんのMCでも「“新館”なのに僕らみたいに年取っちゃってるね。」という一幕が。

赤と金を基調としたいかにも中華料理店といった会場に、マーティン・デニーのSEとくれば、気分はもはやオリエンタル。
およそ200人といった狭いキャパシティの客席の前方にステージが特設されていた。




ステージ後ろの赤い垂れ幕から高田漣さん、伊賀航さん、伊藤大地さん、コシミハルさんの近年細野バンド一同が入場。
それに続き、40年前もここでティン・パン・アレーとしてドラムを叩いた林立夫さん、そして最後に細野さんが大きな拍手を持って迎えられた。

オープニング・ナンバーは「北京ダック」。
“横浜 光る街~”まさに本日の一曲目にふさわしい選曲…!
40年前もこの場所で演奏された曲だ。

曲終わり即メンバー紹介。「後回しにすると忘れちゃうからね。」と細野さん。
「40年前、僕は28歳でした。あっという間だったよね。」と、当時もメンバーだった林さんに。
「僕より年上だったよね?」とトボけ「年は取っても追い越すことはありませんから。」とツっこまれる。


「香港blues」「熱帯夜」「はらいそ」と、トロピカル3部作からの曲を立て続けに披露。
ここ中華街、同發の異国情緒と相まって、会場はトロピカルな雰囲気で溢れた。


続いて白雪姫「ハイホー」のカバー。
同曲のSP盤を幼少期に聴きいたことが、細野さんの音楽体験の原点となったという話しを聞いたことがある。
「子ども向けの曲だけど、歌うと難しいんだ。」と細野さん。
ジャジーなアレンジはさることながら、通しで改めて聞いてメロディーの良さに気づかされる一曲だ。

近年のレパートリーを数曲演奏後、「すごいゲストを呼んでいます。」と意気込もった細野さんが迎えたシークレットゲストは…。


星野源登場

「紅白にも出てここへ来た人っていないんじゃないかな。」と細野さんが呼んだのは、今をときめく星野源。
40年前の細野さんのコスプレで登場した星野源は「口ヒゲも書いて来ようと思ったんですが、明日は書きます。」と。

さらに本日演奏するのはマリンバということで、若き日の細野さんさながらの出で立ちだ。

「星野くんは努力の人です。マリンバも一生懸命練習して。マリンバ奏者になれるよ」
「僕の後は頼んだよ」という細野さんの紹介に静かに謙遜する星野源。


そんな星野源は 細野さんのことを「HOSONO HOUSEを高1のころ聴いて以来、憧れの存在です」と。
さらに、40年前の細野さんの中華街ライブの映像を見てかっこいいと思い、マリンバを始めたという。

細野さんと同じステージに立つのが夢だったという星野源がマリンバ奏者としてまず演奏したのは、
YMOでお馴染みのマーティン・デニー「firecracker」。
細野さんも褒める華麗なマリンバ捌きを披露した。


さらに「テンポが違うだけで同じような曲を演奏します。サケロックはこの曲から命名したんだよね」
と、「SAKEROCK」を。
マーティン・デニーの曲が続けて披露された。
細野さんと共に、この日この場所でこの曲を演奏した元サケロックの星野源と伊藤大地の二人にとって大変意義のあることだったのではないだろうか。


そして「この曲は完全に余興」とのことで始まったのはジェームス・ブラウン「SEX MACINE」。
星野源はエレキギターに持ち替え、ファンキーなプレイを披露。

細野さんの渋い「ゲロッパ」、それに応える星野源のセクシーなコーラス、
林立夫、伊藤大地のタイトなリズム、コシミハルの力強く滑らかなピアノ、
それぞれエレキに持ち替えた高田渡と伊賀航のグルーヴ・・・

余興と言うにはもったいないイかした演奏に会場は大いに盛り上がった。


ここで「また後で出てもらうからね、僕なら帰っちゃうけど」と細野さんに言われ、星野源が一旦はける。


ブギウギin CHINA TOWN

続けて登場したのは日本で数少ないブギウギピアノのプロの一人である斎藤圭土。

近年の細野曲ではブギースタイルが多いこともあって、ゲストとして呼ばれることの多い彼に、
「本当に知り合えてよかった」と細野さん。
さらに「イケメンだしね。女性が喜ぶんですよ」と。

「House Of The Blue Lights」等ブギウギを数曲披露。
近年のライブでも頻繁に演奏される曲に軽快なピアノが加わることで、一層華やかな盛り上がりをみせた。


細野史ハイライト

ステージも終盤、演奏されたのは「Sports Man」「Body Snatchers」。
テクノ・ミニマムミュージック期の曲が、ハイテンポのカントリー調アレンジで披露された。


アンコールには「Pom Pom蒸気」が出演者全員で演奏された。
近年の細野バンドでもしばし演奏され、さらにサケロックオールスターズでもカバーされたナンバーということもあり、全員の演奏がこなれており、コーラスも息の合ったものが聴けた。


この「a NIGHT in CHINATOWN」は細野史における極めて重要なライブだったのではないだろうか。
セットリストはトロピカル期の曲から近年のレパートリーであるカントリーやブギウギ、さらにはテクノ・ミニマム期の曲まで多様で、細野さんのキャリアで変遷する音楽性をハイライトで聴いた気分になった。
細野さんの長い音楽歴と、その幅広い音楽性を痛感した。







星野源20年来の夢

このライブで個人的に印象に残っているのは星野源登場シーンだ。

シークレットゲストに来るとしたら鈴木茂かなと予想していたため、
星野源の登場には驚かされた。

細野さん星野源がと同じステージに立って演奏するのは相当レアではないだろうか。

個人的には福岡で2010年に行われた春フェスで観た、サケロックのステージに細野さんが参加した時以来の共演だった。


今から10年前くらいの星野源のブログで初めて細野さんと対談したときのことが嬉々として書かれていた。
当時星野源はサケロックとしてSTUDIO GROWNやスペシャ・ボーイズ等に出ては、細野さんの音楽の良さを力説していて、かなり好きなんだなと思った。

そんな細野さんと対談するだけでも当時としては相当の出来事だっただろう。
しかし、今や細野さんに曲を提供し、記念すべきライブに呼ばれてベタ褒めされ、サケロック原点の曲を一緒に演奏するという・・・。




16歳の頃から憧れ続けて20年。

なんとも感慨深く思える共演だった。


余談だが
このライブのすぐ後に行われたフェスに出演した星野源は、ギターで鈴木茂をゲストとして招いており、
フォロー(?)も抜かりないなと思った次第である。













2016年9月7日水曜日

ありがとう~小坂忠50周年記念ライブ~



” 歌う事は一生続けたい、たとえ一人になっても……”

エイプリル・フールのレコードで小坂忠の自己紹介欄に、こんな事が記されていた。
当時は1969年。

それから半世紀近く経った今年2016年、小坂忠はデビュー50周年を迎えた。

9月5日、そのアニバーサリー・イヤーを祝うライブが渋谷さくらホールにて開催された。


チケットも即売切れとなった本公演。会場も勿論満員。


70年代のオリジナル曲をセットリストとした第一部と、
カバー曲を中心とした第二部の、
二部編成のステージで行われ、以下のゲストが迎えられた。

鈴木茂、吉田美奈子、矢野顕子、中納良恵(EGO-WRAPPIN')、金子マリ、曽我部恵一、Asiah、尾崎亜美、松たか子、佐野元春、細野晴臣(シークレットゲスト)

バンドメンバーは、
佐橋佳幸/Dr.kyOn/小原礼/駒澤裕城/林立夫/西海孝/真城めぐみ/西村浩二/MONKY(BBBB)/YASSY(BBBB)、山本拓夫


こんな豪華なメンバーで行われるライブは、最高でしかなかった。
何より主役・小坂忠のボーカルが最高だった。


全員に配布されたパンフレット



オープニング・ナンバーは「はずかしそうに」~「好きなんだから」のメドレー。
小坂忠にとってボーカリストとして自信のなかったという時期の曲だが、歳を重ねて豊潤さが増したボーカルに思わず痺れそうになった。


次曲の「ボン・ヴォヤージュ波止場」以降、「HORO」からのナンバーが立て続けに歌われた。


一人目のゲストは”永遠のギター少年”鈴木茂。
鈴木茂がHOROに提供した「氷雨月のスケッチ」を披露。


1974年に「HORO」を出した小坂忠は、同時期にソロデビュー作「バンド・ワゴン」を出した鈴木茂と共に「ファースト&ラストツアー」というライブを行ったそうだ。
本日のオーディエンスにも当時のツアーを観に行ったという人も。


吉田美奈子も「HORO」をバックアップした最強のメンバーの一人。
彼女の存在感のある歌声が聴きどころの「機関車」「ほうろう」「しらけちまうぜ」 を披露。
さすがのボーカル。 小坂忠のソウルフルなボーカルをより引き立てるものだった。


もう一人は「HORO」にキーボードで参加し、「つるべ糸」を提供した矢野顕子。
ピアノを前に、小坂忠(+佐橋佳幸)と披露したのは勿論「つるべ糸」。
”秋の日は つるべ落とし”というこの時期ぴったりの歌詞も相まって、改めて曲の味わい深さを感じた。



最高のメンバーによる「HORO」の曲が披露され、第一部が終了したと思いきや、
「この人なしでは僕の音楽人生は語れません」と呼ばれ、細野晴臣が登場。

事前にアナウンスされていないことだったので、会場は感嘆でどよめいた。

小坂が細野を「エイプリル・フール」に誘って以降、多くの小坂作品に深く関わることとなる細野晴臣。
かつては狭山の米軍ハウスに隣同士で住んでいた二人。

小坂忠は今でも「オミちゃん」と呼んでいるそう。


そんな二人が披露した曲はもちろん「ありがとう」。
細野がリズムギター、小坂がセカンドギター、駒沢裕城がペダルスティールでの3人による、オリジナルよりテンポアップしたカントリー調の「ありがとう」はどこをとっても格別だった。


アルファレコード村井邦彦さんからの花も



第二部は一曲毎にゲストが入れ替わるステージだった。


黒のスーツに衣装チェンジした小坂忠とバンドメンバー。
ステージが一層華やいだ。

中納良恵(EGO-WRAPPIN')に始まり、金子マリ、曽我部恵一、Asiah、尾崎亜美、松たか子と順に登場したゲスト・ボーカルも華やか。
彼らとB.B.キングやサム・クック、ディラン等のカバーをデュエットした。

ときには力強く、ときには伸びやかに曲によって歌い方を変えつつ、パフォーマンスをする小坂忠。
歌うことの楽しさが伝わってくるステージだった。


中でも娘Asiahとのステージが印象的だった。
娘とデュエットのアルバムを出すのが夢だったという小坂忠。
日を同じくして発売された新アルバムでその夢が叶ったという。


第二部の最後を締めくくったゲスト・ボーカルは佐野元春。
佐野が小坂忠に提供した「ふたりの理由、その後」が披露された。


最後は、音楽監督を務めたダージリンン(Dr.kyOn/佐橋佳幸)とともに、
佐橋提供の「夢を聞かせて」が歌われ、本ステージが終了した。


アンコールは「You Are So Beautiful」。
コンサートのアンコールに歌うことが多いというこの曲は、本日発売の新アルバム「Chu Kosaka covers」のラストナンバーでもある。

さらに、本日の出演者全員がステージに集まり(矢野顕子・細野晴臣以外)「ゆうがたラブ」が全員で歌われた。
これでもかというほどファンキーなグルーヴに本日一番の盛り上がる会場。
最高潮のラストとなった。




たくさんの仲間と共に歌う小坂忠を観て、思い返したのはこの言葉。

” 歌う事は一生続けたい、たとえ一人になっても……”

半世紀前のこの言葉がぐっと響いた夜だった。



2016年9月5日