2017年5月11日木曜日

Sweet Maxine~2017年ドゥービー・ブラザーズ来日~



Doobie Brothersの武道館公演の忘備録。

まず、特筆すべきことはこのときの武道館のスケジュール。

4月25日(火)ポール・マッカートニー
4月26日(水)ドゥービー・ブラザーズ
4月27日(木)サンタナ

という、2017年とは思えないレジェンドたちの公演が続けて行われた。
これは豪華な共演もあるのでは、と思わせるスケジュールだ。


結果から言えば、共演はなかったものの、4月24日の金沢公演を終えたドゥービーズ一同が、ポールの武道館を観るという微笑ましい情報が入ってきた。








最前列でポールを観るドゥービーズとビル・ペイン。






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2017年4月26日(水)


天気は曇り気味。風が強い。
物販は、Tシャツ他、キャップやリキュールボトル等。


自分が17時頃に物販の列へ並んだときにはリキュール・ボトルは既に売り切れていた。
グッズの中で唯一2017の文字が入っているバンダナを購入。

色はネイビーのみ。


客層は50~60代中心。中には中高生の子どもを連れたファミリーも。若いカップルは見
渡す限り皆無。


ステージの装飾は垂れ幕のみ。かなりシンプル。


開演を待っていると、舞台の右袖で打ち合わせをするトム・ジョンストンとジョン・マクフィーの姿が見えた。
ジョン・マクフィー観客からの呼びかけに客席に気さくに手を振り応えていた。






開演時間の19時を若干過ぎて、コンサートが始まる。



舞台に立つメンバーは以下。

トム・ジョンストン(Tom Johnston):ボーカル、ギター
パトリック・シモンズ(Patrick Simmons):ボーカル、ギター
ジョン・マクフィー(John MaFee):ギター、ボーカル、ヴァイオリン
ジョン・コーワン(John Cowan):ベース、ボーカル
マーク・ルッソ(Marc Russo):サックス
エド・トス(Ed Toth):ドラム

そして、キーボードは何とリトル・フィートのビル・ペイン(Bill Payne)が!
現在のリトル・フィート唯一のオリジナル・メンバーである彼は、ドゥービーズのサポート歴も2ndアルバムからと長く、準メンバーのような存在。

以上のメンバーがステージに揃い、演奏が始まる。
以下、セットリスト。


1.Jesus Is Just Alright
一曲目から盛り上がる曲!キレのあるコーラス・ワークに、トリプル・ギターに圧倒!
原曲はモータウンの女性コーラスグループが歌ったものだけど、もはやドゥービーズがオリジナルと言ってもいいくらい彼らの色に染まっている。

2.Rockin’ Down The Highway
ハイなテンションそのままに、ここでもトリプルギターとコーラス・ワークが勢いよく響く。
70年代当時のままの、爽やかなハーモニー、ビル・ペインの連打に盛り上がる。
欲をいえば、当時のようにドラムが2台だったらな。

3.Take Me in Your Arms (Rock Me a Little While)
キーが高い曲だからか、ベースのジョン・コーワンがメイン・ボーカル。
会場も“ロックミー ロックミー”と盛り上がる。疾走感半端ない。

4.Another Park, Another Sunday
ハイテンションな3曲が続いた後は、わりと落ち着きのある意外な選曲。
パトリック・シモンズっぽさのある曲だけど、トム・ジョンストン作なんだよなー。
なんでも当時のガールフレンドと別れた体験を元につくられた曲だそうで。だからセンチなメ
ロディなのか。

5.Clear As The Driven Snow
ここで初めてパトリック・シモンズの曲。
どことなくCSNっぽさがパットっぽい。そのCSNに劣らず、ドゥービーも一糸乱れぬコーラス・ワークを披露。
これも意外な選曲。

6.Spirit
ここへきて、ジョン・マクフィーのフィドルが。絶妙なカントリー具合。

7.World Gone Crazy
70年代の曲が続き、ここでわりと最近の曲を。
ビル・ペインのピアノがフィーチャーされた40年前のドゥービーと変わらぬハイなロック・ナンバー。

8.Eyes Of Silver
いつ聴いてもイントロが「Listen to The Music」と紛らわしい。

9.Dark Eyed Cajun Woman


※ビル・ペインのソロステージ
他のメンバーが捌け、ビル・ペインが即興するコーナー。フュージョンっぽい曲調で、ニューオリンズ風の即興を入れたり、コーラスのリズムマシンを鳴らしたり。
ビートルズレット・イット・ビーの一節を弾いてくれるという粋な一幕も。


10.Sweet Maxine
ビル・ペインの、あのピアノのイントロに感涙。
名盤「スタンピート」のオープニング・ナンバー。
メンフィス・ホーンズのようなマーク・ルッソもサックスもイカす。

11.Takin’ It To The Streets
パット・シモンズがボーカル。
しかし、ここはやはりマイケル・マクドナルドで聴きたかった・・・。

12.The Doctor
比較的最近の曲だが、70年代ドゥービーズを思わせる曲でヒットしただけあって、会場も盛り上がる。

13.Black Water
パットかがミシシッピの部分を“TOKYO”と変えて歌い、会場が湧く。その地の名前に変
えて歌うのは70年代からのお決まり。
観客を交えたコーラスの掛け合いも必ずお決まりとしてあるのだが、歌ってると訳分からなくなると
いう日本人には難し過ぎ問題。
ジョン・マクフィーのフィドルソロが聴き応えあった。

14.Long Train Runnin’
今現在CMで使われていることもあり、オーディエンスの歌声もひときわ大きいものだった。

15.China Grove
盛り上がらないはずがない。

16.Without You(アンコール)

17.Listen to The Music(アンコール)
やはりラストはこの曲。会場大合唱。
「音楽が好きで良かった」という初心を思い出すというか・・・アツく、ピュアな気持ちにさせられる曲。
最高潮の盛り上がりで閉幕。


以上、約一時間半のステージ。
ちょっと、あまりにも短か過ぎないか。
周りのお客さんからも、終わるの早っ!との声が。
とは言え、短くも濃密な時間だった。







以上、防備録として、簡単で散漫に書いてみました。

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以下は、気になった点や特記事項等。

<ツアー・メンバーに関して>

・サポートにビル・ペイン。
マイケル・マクドナルドは来ないだろうから、ビル・ペインには来てほしいとちょうど思っていたので感激した。
彼の演奏を聴くことのできる喜びは、リトル・フィートやドゥービーズは勿論、はっぴいえんどや鈴木茂で聴き込んでいたので、自分にとって馴染み深い鍵盤奏者であることも大きい。

・ダブル・ドラムで聴きたかった。
周りのお客さんも口にしていたが、やっぱりドゥービーといえばダブル・ドラムでしょう。
もっと言うと、ドラム・パーカッションは3人は必要。


<セット・リストに関して>

・トム・ジョンストンの曲中心のセトリ。
彼はひたすらパワフルで、カモンと観客をたびたび煽っていた。
年齢を感じさせない熱いボーカルとパフォーマンスで、容姿も若々しく、パットやビル・ペインと同年齢なのが信じられなかった。
ただ、トム・ジョンストンが抜けていた時期の曲の演奏なし。
マイケル・マクドナルドの曲ならともかく、パトリック・シモンズの曲がもう少しあってもいいのでは?!
トムでもなく、マイケルでもなく、パットの曲が一番好きな私としてはこのセット・ リストは多様性に欠ける印象だった。
パットの活躍がもうちょっと観てみたかった。
「Neal's Fantango」「Echoes Of Love」とか聴きたかったなー。


<演奏面に関して>

・即興が少なかった。
メインのギターやサックスの見せ場は多かったけど、それ以外の楽器があまり目立ってなかった気が。

・ビル・ペインにもう少しスポットを当てて欲しかった。
キーボードを弾いてる人がビル・ペインだということに気付いてない人も多かったみたいだし。

・アコースティック・ギターが殆んど登場せず。
リッスンをエレキで演奏したりと、パットやジョン・マクフィーはもう少しアコギに持ち替えて欲しかった。「Slat Key Soquel Rag」とかパットのフィンガーピッキングが観たかったよー。


<その他>

・矢沢永吉が観に来ていたらしい。
ジョン・マクフィーと故キース・ヌードセンは彼のアルバムとライブにに参加した過去があり、今でも繋がりがあるということか。

・久々の日本公演だったからか、コアなファンというかパットファンやMM期ファンには少々もの足りなさもあったかも。
いつか本場アメリカで観てみたいな。まじで行こうかな。
マイケル・マクドナルドも一緒にやってほしい・・・。


追記:そう思っていた矢先に、マイケル・マクドナルドの新譜がリリースされるという情報が。
何でも、17年ぶりの作品ということで、オリジナル曲で構成されているらしい。
タイトルは『Wide Open』 。


少し前に出たサンダーキャット(Thundercat)のアルバムでのコラボレート曲も良かったし、楽しみ。


ケニー・ロギンスと一緒に参加

サンダーキャット然り、今の時代はAORというかメロウな曲がリバイバルしている風潮があるから、マイケル・マクドナルドの新譜リリースには期待が高まるところ。






2017年3月22日水曜日

キリンジ心のベスト10~兄弟時代後期編~


「キリンジしか聴かない時期があった」


以前、星野源が自身のラジオ番組でこう発言したそうで。

おっしゃる通り、キリンジの音楽には聴けば聴くほど良さが増す魅力があります。


星野源は「車と女」「雨を見くびるな」「千年期末に降る雪は」の
3曲を紹介していました。

これらは全てキリンジの初期の頃の楽曲です。

確かに3曲とも名曲ですが…
初期以外も取り上げてよー、と思ってしまいました。


そんな折、キリンジ兄弟時代の後期に当たるコロムビア時代のアルバムと、
各ソロ名義のアルバムがアナログ化されるということで。

前回の初期編に引き続き、今回アナログ化されるアルバム全7タイトルから特に好きな10曲を選んでみました。
 


 

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①自棄っぱちオプティミスト(『DODECOGON』収録)


落ち込んでいるときに聴くと、救われる曲。

兄・高樹による曲です。


全ての歌詞が良いんですが、

“渡る世間の鬼だって 命までは取らない”

というフレーズなんかは人間関係で疲れているときに救われる気持ちになれます


こうした歌詞はもちろん、タイトルのセンスも最高です。

オプティミストとは楽観主義者のことで、
対して、悲観主義者はペシミストと言うそうです。

“自棄っぱちオプティミスト
強気なペシミスト”

対比する言葉の響きが素敵です。


プロデュースは冨田恵一でなく、初のセルフ・プロデュースアルバムの一曲目ということもあり、 
これまでのキリンジには見られなかったエレクトロ・サウンドが新鮮です。



②Ladybird(『7-seven-』収録)


キリンジでエロティックな歌詞と言えば、兄のほうが取り沙汰されることが多いですが、
弟・泰行の歌詞も何かと艶っぽいものがあります。

この「Ladybird」は泰行の曲の中でもけっこう責めてます。

“何度も慣れないキスを奪い合うように
単純なリズムでさ 
止まらない

どうでしょう、この歌詞。激しいですよね…。


こうした激しい歌詞に対して、ボーカルや曲そのものはゆったりしていて気だるさが漂います。

そのギャップが何ともアダルティー。

極め付けは吐息。

歌詞に呼応するように入ってくる泰行の吐息が悩殺モノなのです。

憎いほどにエロティック。


歌詞はひと夏の大人の恋愛が描かれています。

「クレイジー・サマー」と「カメレオン・ガール」もそういうテーマの歌詞の泰行曲でして、
私はこの3曲を「夏の恋愛3部作」と勝手に名付けてます。



③今日も誰かの誕生日(『7-seven-』収録)






高樹によるバースデー・ソング。

基本打ち込みサウンドですが、華やかなストリングが絡み、
かつての冨田恵一プロデュースの楽曲を思わせます。


煌びやかなサウンド、ハッピーなメロディー、ウキウキした泰行のボーカル…

多幸感に包まれます。


スティービー・ワンダー「HAPPY BIRTDAY」以来の
誕生日のアンセムと言っても過言ではないのでしょうか。

結婚式なんかでサプライズバースデーの演出としてBGMで流せば完璧だと思います。



④温泉街のエトランジェ(『BUOYANCY』収録)


まさに湯けむりの立つ温泉にいるような気分にさせられる曲です。

エトランジェとは異邦人のことを言うそうです。

オリエンタルな旅情がそそられます。


「です、ます」調でストーリー仕立ての歌詞は、ちょっした小説や映画のようです。

文学的かつ知的で少しエロティックな味わいのある、高樹らしい歌詞です。


収録アルバムタイトルの『BUOYANCY』(ボイエンシー)とは“浮遊”を意味するそうですが、
この曲の打ち込みサウンドからも心地良い浮遊感が感じられます。
   


⑤Rain(『BUOYANCY』収録)


しとしと降る雨を窓辺から眺めるのって良いですよね。

そんなときのBGMにしたいのがこの「Rain」。
  

穏やかに降る雨の様子が、曲全体から伝わってくる叙景的な楽曲です。


「水色のあじさいの上」と並ぶ、雨をテーマにした泰行の名曲ですね。

兄にも、「雨を見くびるな」「雨は毛布のように」 といった雨をテーマとした名曲があります。

同じ雨をテーマとした曲でも、泰行は穏やかで優しいもの、高樹はインパクトや派手さがあるもので、好対照を成しているのも面白いです。



⑥空飛ぶ深海魚 (『BUOYANCY』収録)


タイトル通り、幻想的な曲。

ゆったりした曲調、エコーがかかったボーカル、空想的な歌詞…

異次元の世界に誘われれるかのような気分にさせてくれます。


泰行の曲には、このようなアーバンな味わい深い名曲が多いです。

「エイリアンズ」はもちろん、「サイレンの歌」や「アメリカン・クラッカー」なんかもそうです。



⑦My stove's on fire(馬の骨『馬の骨』収録)




寒い冬に、ストーブで暖を取りながら聴きたい曲。

泰行のソロ・馬の骨1st収録。


カバー曲で、オリジナルは米SSWのロバート・レスター・フォルサム。

彼が1970年に発表した自主制作アルバムの一曲です。

このマイナーな名曲を選曲したセンスにまず脱帽。


原曲は鍵盤主体のアレンジですが、馬の骨バージョンはギターが主体のアレンジということでフォーキーな印象です。

また、原曲には見られないコーラス・ワークが小粋です。 
もちろん泰行の多重コーラスです。

泰行のボーカルは曲の温もりを一層引き立てます。


こうしたカバーを聴くと、泰行の歌の上手さを改めて感じますね。

原曲にはないアウトロで転調するアレンジもグッときます。

これがオリジナルでいいのでは、と思えるくらいの最高のカバーです。



⑧Carol(馬の骨『River』収録)

 
お次も冬の歌。

冬の歌といえば、クリスマスソング。


キリンジはクリスマスソングが結構あります。

・フィル・スペクター「クリスマスアルバム」のオマージュであるかの如き3連ドラムと、華やかなムードを一層盛り上げるストリングスが印象的な「銀砂子のピンボール」。

シニカルな歌詞に重厚なストリングスが絡む異色のクリスマスソング「千年紀末に降る雪は」。

・堀込高樹ソロ名義でリリースされたアルバムからの「雪んこ」。

・弓木ちゃんのボーカルが愛らしい新生KIRINJIによる「クリスマスソングを何か」。

そして、馬の骨2nd収録の「Carol」。


「Craol」は上に挙げたクリスマスソングの中でも一番穏やかで優しい曲です

イルミネーションが光る街や、華やかなパーティーといったシチュエーションというより、
気心の知れた家族や恋人と家でまったりと過ごすクリスマスに聴きたい曲ですね。
  


⑨冬来たりなば(堀込高樹『Home Ground』収録)




クリスマスとくれば、お正月。

クリスマスに比べ新年をテーマにした曲はほとんどないですよね。 
恋愛にも結びつけ難いしどう歌えばいいのか、といったところが原因でしょうか。

しかし、さすがは高樹。
ソロ名義でのアルバムのこの一曲は、新年の晴れやかなムードが巧みに表現されています。


正月気分そのものって感じの歌詞が秀逸。

“無駄遣い 覚えるのは易しい そしてまた楽しい”

というフレーズなんかまさにそうです。

新年の浮かれたムードにまかせて購買意欲が高まりがちになる感じが描かれています。


はしゃいでいるかのような原田郁子(クラムボン)のコーラスも、晴れやかな気分を高めます。

これを爽やかな曲にのせて歌ってるのも心ニクい。



⑩絶交(堀込高樹『Home Ground』収録)


この衝撃的なタイトル。 

高樹が尊敬する阿久悠辺りのエグさがあります。 


歌いだしの歌詞も衝撃的で、

“君を棄てて、仕事やめて”

というフレーズで始まります。


堀込高樹ソロアルバムの一曲目ですが、オープニングからインパクト大ですね。

タイトルだけで判断してするとなんだか重そうな曲ですが、きわめて清々しい曲です。

ここでの絶交とは、これまでの人生に見切りをつけるという意味を指すのではないかと思われます。


“月の夜 遠吠える野犬のよう 
胸騒ぎがしているよ 今はまさに孤独の季節”

・・・この、あとぐされ、わだかまりのない感じ。

新たな人生のスタートが描かれています。曲調も爽快。



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以上、キリンジ心のベスト10〜兄弟時代後期編〜でした。


冒頭の星野源のラジオに限らず、キリンジといえば初期の曲が取り沙汰されることがほとんどです。

確かに初期の曲のほうが何かと強烈だったり派手だったりと、インパクトあるものが多いです。


しかし、後期や各ソロも良い曲だらけなんです!


なんというか、寄り添うような良さがある曲が多いのです。

味わって聴きたい曲と言いましょうか。

今回アナログ化される作品こそレコードでじっくり聴きたくなるようなものばかりなので、ぜひお買い求めください。
(コロムビアの回し者では決してありません)


そうそう、この時期のキリンジだと
「星座を睫毛に引っかけて」なんかもすこぶる良いです。

キリンジ2枚目のベスト・アルバム収録曲ということもあり、埋もれがちな名曲ですが…。

本作もぜひアナログ化してほしいところです。
(コロムビアさんお願いします)



キリンジ心のベスト10~初期編~:http://srysig.blogspot.jp/2016/09/10.html

クレイジー・サマー~夏に聴きたいキリンジの10曲~:http://srysig.blogspot.jp/2017/08/10.html

2017年3月18日土曜日

ドゥービー・ブラザーズの要、パトリック・シモンズ

ドゥービー・ブラザーズで好きなメンバーは俄然パトリック・シモンズ。

パトリック・シモンズ(Patrick Simmons) ことパットはドゥービーズのデビュー以来、唯一のオリジナル・メンバーである。

彼こそがドゥービーズの要なのだ!!

Taken' it to the streetsのこのドアップはパット・シモンズ


しかし、ドゥービー・ブラザーズと言えば、トム・ジョンストンもしくはマイケル・マクドナルドが好きだという人が多いだろう。

70年代前半ドゥービーズの豪快なロックが好きな人はトム・ジョンストンを、
70年代後半ドゥービーズのAORなサウンドが好きな人はマイケル・マクドナルドを選ぶように、
時期によって2人の音楽性が顕著に反映されているからだ。


このように、ドゥービーズといえばトミーとマイクが目立ちがちである。
またこの2人はボーカルも特徴的だ。

トミーは荒々しいロックサウンドに合う、ブルージーでワイルドなボーカル。

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一方、マイクはスモーキーで深みのあるソウルフルなボーカル。

2人ともインパクトのある濃ゆい顔をしているが、その歌声も濃厚で印象的である。


パットはといえば、クールでさわやかな声の持ち主だ。2人ほどの個性はないが、クセが強くないと言う意味では耳馴染みが良く、聴き易いボーカルだと言える。

顔も端正で容姿もスマートなナイス・ガイだ。

イケメンで声も良いパットだが、強烈な2人の影になりがちなのである。


…って結局顔じゃん!、と言われそうなので、具体的にパットの楽曲を聴いてみよう。

以下、特に好きなパットの10曲です。(リリース順)



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①South City Midnight Lady(『Captain and Me』収録)


フォークやカントリー・ミュージックからひときわ影響を受けたパットならではの曲。
歌詞はパットの故郷であるカリフォルニア州南部のサン・ノゼ(=サウス・シティー)の女性たちを讃えたもの。

カントリー・テイストを際立たせるペダル・スティール・ギターを演奏するのは、
当時スティーリー・ダンに在籍していたジェフ・“スカンク”バクスター。

ミドル・テンポの爽やかな曲調で、
カントリーを基調としているが、いなたさはなく、メロウで都会的。
タイトルの表す通り、まさにシティーでミッドナイトでレディーな曲。


トミーのブルースに根ざした荒々しいロックサウンドと好対照を成す。


②Black Wlter(『ドゥービー天国』収録)


パットと言えばこの曲を挙げる人が多いのではないだろうか。
言わずと知れたドゥービーズ初のヒットナンバー。

歌詞はミシシッピへの憧憬にあふれ、旅情掻き立てられるものだ。

この歌詞の通り、ホンキー・トンク調な曲だけあって、
フィドルが効果的に演奏される。


途中でゴスペル調のコーラスの掛け合いが始まり、雰囲気がガラっと変わる展開もユーモラス。

このコーラスを発案したのはプロデューサーのテッド・テンプルマンだそう。
かつて彼自身が在籍していたハーパース・ビザールで複雑なコーラス・アレンジを担当していたこともあり、ドゥービーズのコーラス・ワークも特色あるものとなっている。

同時期に活躍したウエスト・コーストのバンドでコーラス・ワークが抜きん出ていると言われる所以は、彼の関与が大きいのではないだろうか。


こちらのライブバージョンのジェフ・バクスターによるペダル・スティールも鳥肌モノ。
曲の幽玄さを際立出せる。



③Neal's Fandango(『スタンピート』収録)


スピード感溢れるロック。

ダブル・ドラムとトリプル・ギターが力強く疾走する。
まさに“スタンピート”の如き勢い。

リトル・フィートのメンバーであるビル・ペインの鍵盤が入り、ソロ回しにも拍車が掛かる。


ここでも素晴らしいコーラスが聴ける。
1分45秒辺りからダイナミックなスケープが広がっていくように、サウンドが開ける。
これぞバーバンク・サウンド。


こうしたサウンドもプロデューサーのテッド・テンプルマンの付与するところが大きいのではないだろうか。



メンバーとエンジニアのドン・ランディと共に裏ジャケに映るテッド(下段右から2番目)

因みにニールとはビート詩人のニール・キャサディのことで、同アルバム収録の「I Cheat The Hangman」にも見られる、ストーリー性ある歌詞となっている。
こうした捻りの効いたパットの歌詞は、音楽一筋な歌詞が多いトミーや恋愛ソング中心のマイクとは一線を画する。



こちらのライブの演奏もとてつもなくエキサイティング。
間奏のギター・ソロで暴れまくるジェフ・バクスターが最高。


④Slat Key Soquel Rag(『スタンピート』収録)


パットと言えばアコギのフィンガーピッキング。
ここではお得意のラグ・タイム奏法を。
歌なしだが、ギター・インストとして充分楽しめる曲。

パットはAOR路線に突入後も、「Larry The Logger Two-Step」や「Steamer Lane Breakdown」といったカントリー調インストナンバーを1アルバムにつき1曲取り入れ続けた。



⑤8th Avenue Shuffle(『ドゥービー・ストリート』収録)


舞台はニューヨーク。
かつて歌われた南部への憧憬に対し、本作では都会の喧騒が陽気に歌われる。

トミーの体調不良によるバンドの脱退により、
スティーリー・ダンからジェフ・バクスターとマイケル・マクドナルドの2人が加入するに伴い、
パットの楽曲も音楽的に一層幅広いものになっていった。

本作はメンフィス・ホーンのソウル・フルな演奏や変速リズムが取り入れられ、
サウンドにおける目覚ましい変化が楽しめる。

また、パットとスカンクの異なる個性を持ったギター・プレイの対比も面白い。
ラテン風のギターリフを基調とし、ブリッジ部分にはブルース風の豪快なリードギターが聴ける。


カリフォルニアの片田舎から、大都会ニューヨークへと、
ドゥービーズは都会的なサウンドに移る。


⑥Rio(『ドゥービー・ストリート』収録)


「8th Avenue Shuffle」と同じくラテン調の曲ではあるが、洗練度が大幅に増す。

サンバ風のパーカッションとジャジーなエレピによるイントロにベースが入ってくれば、グルーヴが一気に炸裂。
リオのカーニバルよろしく、解放感に満ち溢れる。

万華鏡のようなコーラス・ワークは楽曲に煌めきを与える。

「ねえ、乗ってかない?」
というワンフレーズだけ登場するマリア・マルダーが何とも粋な演出だ。


⑦Echoes Of Love(『運命の掟』収録)


パットの曲にもマイケル・マクドナルドの個性が色濃く反映されるようになる。

パット作のこの曲も、本来ならギター中心のアレンジといったところだろうが、
イントロも曲全体のアレンジもマイクのシンセが中心である。
キャッチーなシンセのリフがいかにもマイクらしい。

パットによるメロウなメロディーと爽やかなボーカルはマイクのサウンドとも相性抜群だ。

シングルとしても発売された。


⑧Livin' On The Fault Line(『運命の掟』収録)


より複雑化するリズム。
より深遠化するグルーヴ。 

同アルバム収録の 「China Groove」に通じるインプロビゼーション・ナンバー。
ファンキーでジャズ色の強いプログレッシブな楽曲であり、パット、そしてドゥービーズの新境地と言える。

後半にかけて曲が盛り上がっていく様は、静かな気迫を感じさせる。
ビブラフォンが効果的。

こうした曲もトミーやマイクには無いもので、
カントリーやメロウ路線とは別のパットの持ち味が発揮されている

アルバムの表題曲。


⑨Sweet Feelin'(『ミニット・バイ・ミニット』収録)


アコーステック・ギターの音色が優しく響く、最高にメロウな一曲。
ワーナーのレーベルメイトであるニコレット・ラーソンとパットのデュエットが美しい。

呼応するようなコーラス・ワークも甘美。

プロデューサーのテッド・テンプルマンも共作し、パーカッションとしても曲に参加。
彼の叩き出すサウンドは曲のソフトな印象を際立たせる。

まさにSweet Feelin'な曲。



⑩If You Want A Little Love(『メロウ・アーケード』収録)


最後はパットの唯一のソロアルバムから。

1982年にドゥービーズを一旦解散させたパットは翌年ソロ作をリリースする。

トミーからマイクまでお馴染みのメンツも参加。

楽曲はカントリー調のものやポップ・ソウル風ナンバー等、ドゥービーズ・サウンドを彷彿とさせるものに交って、
ハード・ロックやディスコ風といったアレンジやヒューイ・ルイスのカバー等、ドゥービーズ時代のパットらしからぬ楽曲も見られる。

本作「If You Want A Little Love」はディスコAORな楽曲。
咲き乱れるような早口コーラスが何ともユニーク。
タワー・オブ・パワーによるホーンが彩りを添える。

パットの新たな一面が垣間見える楽曲となっている。



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以上パットの魅力を掘り下げてみました。

メンバーチェンジによってバンドの音楽性が大きく変化するに伴い、自身の音楽性に柔軟に磨きをかけていったパット・シモンズ。

つまり、強引に言い方をしますと、パットの歴史=ドゥービーズの歴史でしょうか。

パトリック・シモンズこそドゥービーズの要だ。
と、冒頭で豪語しましたが、それが過言ではないということが伝われば…、と思います。